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[病院のこと]

2025年07月31日

緊急時の対処法、決めていますか?

こんにちは、獣医師の大野です。

最近とても暑いので、のんさんの部屋は24時間エアコンつけっぱなしです。
エアコンが嫌いな猫はとても多いのですが、
のんさんは比較的受け入れてくれていますし、エアコンの風が当たらない
秘密基地のような空間もしっかり用意してあります。
いくらエアコン嫌いだったとしても、電気代がかかったとしても、
熱中症にするわけにはいきませんので。

帰宅後のん部屋のドアを開けると、小走りで部屋から出てきて
30℃近い廊下に寝っ転がってゴロンゴロンするのが日課です。

1

いえーい
朝からお留守番してたので、甘えたいモードののんさん。
2

こっちで いっしょに ごろごろするにゃ

正直腹ペコで仕方ないのですが、不在であったことを土下座して詫びつつ、
まずはのんさんが満足するまでこねくり回さねばなりません。これは義務です。


いえい

嬉しくて荒ぶるのんさん


たがしかし・・・廊下は暑い!
エアコンが効いた涼しい部屋があるのに、この儀式はいつも廊下です。
仕方ないので私も廊下に寝っ転がってのんさんのゴロンゴロンに付き合います。

これが意外と長くて、15分ぐらいかかります。
いいんです、だってのんさんはずっとお留守番してて寂しかったんですから。
なので、床暖房のようなフローリングに1人と1匹で転がり、
お互い今日どんなことがあったかを報告しあいます。
のんさんはすごくたくさん喋ってますが、言いたいことを言った後は
私の話はあまり聞いてくれてません。明後日の方向を見てます。
でもそんなのは今に始まったことではないので全然平気です。

ただね、ひとつ言わせていただくと、
「もう きがすんだにゃ」って一人でスタスタと涼しいリビングに消えて行かないで欲しい。
スタスタ

私は何故腹を空かせたままこんな灼熱の廊下に転がってるんだろう・・・って
切ない気持ちになります。疲れて起き上がるのもめんどくさいし。

のんさんを呼んでも迎えに来てくれないので、しょうがないから自力で立ち上がりますが、
当ののんさんはお皿の前で「おなかすいたにゃ おそいにゃ」って顔してます。

なんて自分勝手な猫だ!けしからん!かわいい!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

夏休み期間になりました。旅行や帰省を計画されている方も多いかと思います。
なのでこの時期、問い合わせが増えるのが
「ペットホテルの予約をしたいんですが・・・」
当院は開院当初はペットホテルの受け入れを積極的に行っていました。
来院数がそれほど多くなかったことや法律の規制も少なかったので、
ケージの空きがある限りは1週間以上の長いお預かりも受け入れていました。

ただ、近年は状況が変わりつつあります。
数年前に環境省で法改正があり、ざっくり言うと
「動物を長時間狭いケージの中に閉じ込めたままに
しておくことは虐待なので禁止」

という法律が出来ました。
これは狭いケージにぎゅうぎゅうに押し込めて繁殖させて
子犬を高値で売るようなブリーダーが多数存在していたり、
保護施設と謳いながら実際にはしっかりとした管理をせずに動物を集めるだけ集めて、
最終的には多頭飼育崩壊のようになってしまう所も存在するため
これらを取り締まるための意味合いもある法律だと思います。
また、個人で飼っているお宅でも、散歩にも行かず狭い部屋に閉じ込めたまま
次々新しい子を購入して数だけ増やしていく人、
一生ケージから出すことなく触りたい時だけ触るスタイルで飼う人も存在します。
他人の目がない分個人宅の方が状況は悪いかもしれません。

ペットホテルの中にもそういった危険業者は存在していました。
ギリギリ体が入るぐらいのケージに入れて、睡眠薬のようなものを飲ませてとにかく眠らせる、
薬が切れて目が覚めたらもう一回、というように、
起きてる時間がほぼないぐらい連続で投与するところもあったようです。
こういう業者は大きいケージを用意する必要がないので(寝てるだけだから)、
法改正によって廃業に追い込まれる形となったはずです。

上記のようなペットホテルに対しては全く賛同はできませんし、
医療的知識のない素人がなんて危険なことをしているんだろうと思います。
でもそんな時はただ怒るのではなく、何故そうなったのかを考えてみるようにしています。

何故薬剤を大量投与してホテルを引き受けていたのか・・・
そもそもホテル業を始めた時からそうだったのか・・・
こんなことをするということは動物が大嫌いなのか・・・


よくよく考えると、おそらく最初は違っていたのではないかという気がします。
動物が大嫌いなのであれば、動物を扱う仕事を選ぶはずがありません
嫌いでも頑張れるのは、それなりの報酬を得られる時だけだと思いますが、
ペットホテル業はとても大変で責任が重い割に実入りはとても少ない職業です。
食事を与え、散歩に行き、排泄の世話をするだけで済む子もいますが、
ケージ内で全身ウンコまみれ、そのウンコを飛ばして
ケージの外までウンコまみれにしてしまう子もおり、
日に何度もシャンプーや大掃除が必要ですし、
しつけがされていない動物もたくさんいますので、
世話をする人が咬まれてケガをしたり散歩中に逃走したり、
吠え続けることで近所迷惑になったり
他の動物がストレスから体調を崩したりします。
ホテル


更にはケージになれていないことで自傷行為を始め、
ケージに鼻をこすりつけて皮がむけて血が出てしまったり、
ケージから出ようと爪でひっかいて爪を折ってしまうこともあり、
「預かり中に虐待されてたのではないか」と誤解を受けることもあります。
つめ


当然人件費も水道代・ガス代・電気代・時間もかかり、
大量のペットシーツが必要なだけでなく、預かってる側のメンタルも相当削られます。

動物側は飼い主がいないことや自宅以外のよく知らない場所で
好きでもない相手から世話を受けるのですから当然ストレスになりますし、
ストレスだからこそ問題行動も多くなってしまいます。
ぐるぐる

↑こういう尻尾を追いかけてグルグルするのもストレスのサインです。

適切なトレーニングをしたり、ケージや家族以外の人間になれていない子が
ペットホテルを利用した場合、喜んでいるのは飼い主さんだけ、ということになります。

そこまで大変な思いをして1泊数千円、雑費を引いたら残るのは微々たるものか、
寧ろ赤字になってしまう可能性もあります。
それでは生活していけないので複数匹預かる、となると同じ作業が頭数分かかります。

ペットホテルの料金を「高い!」という方は結構いますが、
人間のホテルはビジネスホテルでも1万円ぐらいしますけど、
別に部屋中ウンコまみれにする人はいませんし、
スタッフに体を洗ってもらうわけでもありませんし、
散歩に連れ出してくれたりもしないですよね?
宿泊客が突然客室係を咬む、とかもないでしょう。

預かった子の手間度合いで追加料金を請求すればよいのでは?
という考え方もあります。
とっても良い子で全く手がかからない子が通常料金プラスお散歩代だけ、
再起不能なぐらいタオルをビリビリにしたらタオル代500円
全身シャンプーになったらシャンプー代5000円×回数
スタッフを咬んだら医療費10000円×回数
吠え続けたらご近所へのご挨拶代を含め10000円、など。
そうなると問題犬は1泊で数万円する計算になります。

ただ、このような料金設定を取っているところは私の知る限りではありません。
手のかかる子の飼い主さんはそもそもしつけに関して無頓着であったり、
吠え声が他の人や動物のストレスになると考えていない方が多いですが、
自分に降りかかってくる負荷には敏感でトラブルになる可能性が非常に高いからです。

となると、どうなるか・・・。

ペットホテル 廃業   もしくは
手がかからない子だけ預かる

ということになり、その結果が今現在の
【飼育頭数の割に世の中にペットホテルが少ない】状態だと思います。
迷惑をかける人がいるせいで、ちゃんとしている人まで被害を被る
という構図は人間社会でも良くありますが、
まあ、そもそも問題を抱えた子は多いので仕方ないかもしれませんね。
もっとみんながしっかりトレーニングに取り組んで良い子が増えれば
またペットホテル業を始めようという人が増えるかもしれません。

当院も、何度もスタッフ間で意見を出し合い、
・手がかかってしまう子のために診療業務に支障をきたすのは本末転倒
・緊急入院となった場合を想定した場所の確保が必要
・入院している子のストレスにならないことを最優先に考える

という観点からホテル業を縮小しました。
宿泊料金を上げるとか上げないとかの前に、診療業務が優先なのは当然です。
自分が救急車で運ばれた先が、
「空きベッドは観光客がホテルとして使ってるので入院できません」って言われたら
全然納得できないですよね?
具合が悪くて入院しているのに、元気な奴が隣のベッドでうるさかったら嫌ですよね?
入院



そもそも当院のケージは入院用なので、元気な子にとってはとても狭く、
この狭さが法律的にアウトになったのもこの決断の後押しをした形となりました。

法改正以降、新しく動物を迎えた方々にはこれまで以上に
トレーニングの重要性をお伝えしています。
当院では新規のホテルを希望する際には、事前にお試しホテルをして
お預かりできるかどうかの検討
が必要になりますが、
お預かりが可能と判断されたとしても、2泊までです。

急な不幸があったりなどで預けなければならない事態は突然来るかもしれないので
今のうちから長期預かってくれるペットホテルやペットシッターを探しておくこと、
そしてなにより日頃からケージに慣らしたりトイレトレーニングをしたりと
他人に預けられる状態にしておくことが不可欠とお話しています。

仮に利用しようと思っていたホテルが満室だったり閉店してしまったとしても
「どこで誰に預けても大丈夫な子」にしておけばそれほど苦労しませんし、
犬好きのお知り合いが喜んで預かってくれる可能性は高いです。

もしどうしてもトレーニングができないという場合には
・毎回旅行には一緒に連れて行く  もしくは
・その子が寿命を迎えるまでは旅行には行かない  もしくは
・吠えられても咬まれても気にしないよ、という人を探して友だちになる もしくは
・ご近所さんやペットシッターさんに自宅の鍵を渡して世話に来てもらう
という選択肢になります。

面倒なことに手を出さず、普段から対策も取らず、
いざとなれば誰かが何とかしてくれるだろう
なんて考えは絶対にダメです。
土壇場で引受先がないとなった時に
「じゃあどうしろって言うんですか💢!?」と言われたり、
「法律違反でも構いません」と言われることもありますが、
あなたが良くても、預かる側もペットも、全っ然良くない!


これに関連したお話ですが、
飼い主の緊急事態の時、ペットをどうするか決めていますか?

先日、ある女優さんがご自宅のマンションで遺体で発見されたとニュースがありました。
死後数日経過しており、その方は猫を飼っていたので
その安否にも注目が集まりました。
最終的なざっくりとした発表では、自殺ではなく事故死で、
猫も無事に保護されたとのことでしたが、こういう話題、他人事ではありません。

私はのんさんと生活しているので、自分に何かあったら
どうしたってのんさんの世話を人に頼まなければなりません。
私はのんさんを育てるにあたって、その一点だけに集中してしつけをしました。
なので、怖がりではあるけど他人を攻撃したりはしませんし、
自分の家じゃなくてもご飯をちゃんと食べ、
排泄も必ずトイレで行い、犬にも他の猫にも慣れていて
ケージの中でも大丈夫な今ののんさんが出来上がりました。
誰が世話することになったとしても大丈夫なように、
のんさんの緊急グッズには【のんさん取扱説明書】も一緒になっていて、
預かった人が「どうすればいいんだろう」と悩んだ時に確認できるようにしてあります。

ここまで準備をしていたとしても、そもそも私が自宅で倒れてしまった場合
私が発見されるまでの時間、数時間か数日間か数週間かはわかりませんが、
のんさんは放置になるので、発見が遅ければのんさんの命にも関ります
また、「あの人に預かってもらおう」と私が勝手に思っていたとしても、
その人に伝えていなかったら、「え?無理!」と言われて
のんさんは路頭に迷うかもしれません。

これは私が一人で生活しているから問題になるというわけではなく、
たとえ一人でなかったとしても、一家全員食中毒や交通事故で入院とか、
一家全員自然災害で被害に遭うとか、ありえない話ではありません。

誰に預かってもらうかを考え、その人に事前にお願いをしておくのは当然ですが、
その前に自宅にいるペットを誰に取りに行ってもらうのか
どうやってカギを開けて中に入ってもらうのか
取りに行ってくれた人が咬まれたり引っ掛かれたりすることなく簡単に捕まえられるのか
ペットが預かってくれる人に対して過度な恐怖心や攻撃心を抱かずに世話をさせてくれるのか
預かり先で、ペットが体調を崩さずにご飯をしっかり食べ、排泄も我慢せずにできるのか
預かってくれる人に過度な負担を強いるようなことはないか・・・
準備しておかなければならないことは山ほどあります。

また、どんなに扱いやすく良い子だったとしても要注意なのが、手作り食の子たち。
何種類かのこだわり食材を毎回計量し、鍋で煮て、冷まして・・・
となると、預かる側の負担は非常に大きく大変です。
普段家にいる時は手作りだけど、預けるときはドライフード
とかなら問題ないのですが、「ドッグフードは全く食べません」とかだと
預かる人が大変なだけでなく、犬もストレスが大きいですし、体調を崩します。
いざという時は何でも食べられる子にしてあげることも、大事な準備です。

また、高齢世帯でペットを飼っている方もちょっと胸がざわつきます。
保護施設などは、譲渡を希望される方の年齢制限を設けていたりしますが、
ペットショップやブリーダーは購入してもらうことが最終目標なので、
「高齢世帯に子犬・・・先々のことちゃんと考えてるんだろうか」
と不安になることが多々あります。
“生きがい”とか“一人じゃ寂しいから”とかよく聞く言葉ですが、
その人が元気な時ではなく、元気じゃなくなった時の
現実的な部分をどこまで準備できているんだろう・・・
かと言って、それを言えば気分を害されるだろうし・・・

だからせめて、もしもの時にみんなが欲しがるような良い子に育ててほしいのです。

お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、最近待合にこんなものを置いてみました。
犬
猫

やることチェックシート

新しく子犬や子猫を飼い始めた方々に、お配りしているものですが、
【動物を飼うならこれは絶対にしなきゃダメ】なことから
【これができると完璧!】なことまで、動物を飼育するにあたっての
様々な項目が列挙してあります。
ワクチンが終わっていない子犬はお散歩に行けない分、
家の中にいる時間が長いので折角だからその時間を有効に使ってほしい!
小さいうちから教えると覚えるのも早いし、簡単に習慣化できますよ、という意味で
お渡ししていましたが、成犬であってもできると嬉しいことがたくさん書いてあります。

夏休み期間中のお子さんにも挑戦してみてほしいです。
私も小学生の頃、既に成犬だった大型犬に【伏せ】を教え込みました。
成犬でも、相手が小学生でも、真剣に向き合えば覚えられますし、
犬との関係性も良くなり、お子さんの自信にも繋がると思います。
外は暑いですからね。お散歩に出られなくても、
室内でたくさん遊んで、たくさん構ってあげてください。
そして大人は、緊急時の対応について考えてみて下さい

診療時間

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