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あんなかどうぶつ病院
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2022年12月22日 [日常あれこれ]

私が獣医師をしていて辛いこと(あくまで個人の見解です)

こんにちは、獣医師の大野です。

先日のんさんが大人しいと思って見に行ったら
猫をダメにするクッションハウスとブランケットに飲み込まれてました。
たすけて〜

↑助けを求めている手

師走で忙しい時期なのに、出て来れなくて困っているのだと思いましたが、
出してあげようとしたらお断りされたので諦めました。
どうやら自分の意志で吸い込まれていったようです。
ぐだのん

しわすなのに!

羨ましい…代わってあげたいですね。
でももしかしたら猫の手を貸してくれてる瞬間かもしれません。
のんさんはやっぱり優しいです。


私の2022年の投稿は今日が最後になりそうです。
皆さんがどんなタイミングで当院のブログを読んでいるのかわかりませんし、
一体何人の方が読んでいるのかも全くわからない状態で書いています。

時々診察にいらっしゃった方に「見てますよ」と声をかけていただくことがあり、
「ありがとうございます!」と言いつつ、
「読者って本当に存在するんだな〜」としみじみ思ったりもします。

職場と家を往復するだけの私の日常は、そんなに愉快なことなんて起こらないんですが、
何とか日常からネタを探しつつ書き始めて多分120回を超えたぐらいだと思います。
できるだけ楽しい話題をと思っていますが、
でも私の頭の中にあるのは楽しい話だけではありません
普段生活をしていると、動物に関する耳を塞ぎたくなるような話も沢山あります。

なので今回は、動物について少し真面目な話をしようかと思います。
この手の内容が苦手な方もいるのは100も承知の上ですが、
正直私の胸だけに留めておけないので吐き出させてほしいのです。
あくまでも私個人の見解であって、病院としての見解ではありませんが、
動物と関わって生活をするなら是非頭の片隅に置いておいてほしい話ですし、
最後までお読み頂ければと思います。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
皆さん、こちらのニュースをご存じですか?

https://www.fnn.jp/articles/-/293434
杉本彩さん「ペットの展示販売が諸悪の根源」
非人道的ビジネス“ペット業界”の闇


長野県松本市で、30年以上にわたり劣悪な環境で
犬の繁殖業を営んでいた業者が摘発された事件です。
従業員から通報があっても行政がずっと見て見ぬふりをしていたのを、
杉本彩さんが動いたことで表沙汰になり、動物の保護と関係者の逮捕につながりました。

犬種によっては自然分娩が難しいものもあり、その場合は帝王切開を行うのですが、
この業者は獣医師免許を持っていない人が、麻酔をかけたりもせず、
痛がる犬を押さえつけてお腹を開けていたようです。
オペ器具


この業者から保護された繁殖犬を、当院でも何匹か避妊手術しましたが、
知識のない素人が何度もお腹を開けて中をいじっていたため、
癒着といって内臓同士がくっついてしまったりしている部分も多く、
通常15分以内に終わるような手術に1時間近くかかりました。
仮に帝王切開を何度したとしても、しっかりと技術や知識を持った獣医師がやれば
あのような状態には絶対にならないですし、
恐らく無麻酔で手術されて、恐怖と痛みの中でそのまま亡くなった子も
たくさんいるんだろうな
と容易に想像がつくような状態でした。

繁殖業者のすべてがそうではないことは勿論わかっていますし、
ちゃんとやっているところも存在します。
でも実はこういった可哀そうな動物たちの話はこの仕事をしていると度々耳にします。

私がこれまでに出会ったある患者さんは、ある犬種を繁殖させていました。
かなり特殊な犬種であったため、基本的にオスにしか需要はないとの話でした。
気になってつい、「でも確率的に半数はメスが生まれますよね?どうするんですか?」と聞いたところ、
メスが生まれた場合や高値がつかなそうな子犬は、
大きな穴を掘って生きたまま土に埋めてしまうという事実を聞かされました。
穴掘り


そういう噂を都市伝説のように聞いたことはありましたが、
実際に行っているとは思っていなかったので衝撃でした。

また、「ペットショップで買うなんて…。うちはブリーダーからです!」
と言われる方いらっしゃいますが、大差ない気がしています。
ペットショップやブリーダーから動物を購入する場合、
ちゃんとした知識のある人が交配させたかどうかは定かではありません。
私が以前診察をしていたブリーダーは、生まれてから一度も
下痢以外の便をした事がない動物を交配に使用していました。
妊娠中や授乳中は子供への影響があるので薬の投薬が出来ないため、
せめてまずは下痢を治してから繁殖してほしいと何度伝えても、
病気の状態で何度も交配させてしまっていました。

管理方法にもよりますが、ブリーダーのところは過密状態で飼育していたり、
1匹1匹の健康管理とかストレス対策なんてどうでもいいと考えているところも多数存在しています。
何かしらの病気などがある状態で飼育されている場合もかなり頻繁に見られます。
過密飼育

私がこれまで出会ったブリーダーの約8割がそんな感じでした。
動物は一度に複数匹出産しますが、仮に4匹生まれて1匹30万円で売ったとすると、
一度の出産で100万円以上になります。
勿論必要経費もあるでしょうが、数千円程度の治療が出来ないはずがありません

交配に使用したら、最悪その母親が死んでしまうことがあると伝えましたが、
ブリーダー側の言い分としては、他にも同じぐらいの時期に出産を控えている母親がおり、
子供さえ取れれば授乳は別の子にさせられるので死んでも構わない
というものでした。

また、「自分たちブリーダーが病気の子を作り出すことで、
動物病院にも仕事を与えているんだからWin-Winだ。
自分たちのおかげで患者が増えるんだから感謝してほしいくらいだ」
と言われました。
生まれた子供が病気であれば「可哀そうな子」という付加価値がつき、
お客さんの同情心を誘ったり、最悪処分されるかもという危機感をあおることもできるので
販売業者はそれほど大損はしないらしいです。
仮に先天性の病気があって早死にすれば、また次の子を購入するので
経済が回るから良いことである
とのこと。

でも、「生まれつきの病気を持っている可哀そうな子」が適切な医療を施され、
幸せに生きていける保証はどこにもありません。
動物を車やアクセサリーと同じような物と考えている人は、販売業者に限ったことではなく、
購入する消費者側にも実は結構いたりします。
手に入れて仔犬や仔猫の頃だけ可愛がった後は、その子の幸せなんて二の次という人が、
購入した側にも少なからず存在しているのです。

例えば、無理な交配のためか先天的に病気があり、
毎日薬を飲まなければ命をつなぐのが難しい病気の動物たちもいます。
仮にそれが1日100円程度の金額であったとしても、飼い主が「高い」と拒否すれば終わりです。
購入する時には数十万の大金を平気で出すのに、手に入れた後は
1日にジュース1本分程度の金額であっても勿体なく感じる人もいます。

「薬代をかけるならそのお金を新しい子を購入するのに使うから、この子の治療をやめる」
と言われることもあります。
そもそも新しい動物以前に、そんな人はどんな動物でも飼う資格はないと思っていますが、
金さえ積めば手に入る世の中です。

私は元々気が長いタイプではないことは自覚をしていますが、
そんなことを言われても、家族でも友人でもない飼い主さんをぶっ飛ばすわけにもいかず、
立場上苦言を呈する事もできないのが現状です。
仮にもし苦言を呈して飼い主さんがよりそのペットに負の感情を抱いた場合、
その子がその後大事にしてもらえるかの保証がないので下手なことは言えません。
それに私が何か言って心変わりするような人は、最初からそんな考えに至らないはず…。

「世の中にはいろんな考え方があるから尊重しよう」とか、そういう
腑抜けのような(クソみたいな)まとめ方は出来ないような内容に、心底憤っていますが、
それでも表面的にはもの凄くやんわり「そうですか・・・」と言うしかないのです。
そういう人の前で獣医師なんて本当に無力だな〜と痛感します。
これは動物が法律上【モノ】である以上は仕方のないことなのかもしれません。
【モノ】じゃない!【家族】だ!」と思う方もいると思いますが、
まあ実際家族なら《お金を出して買う》なんてことはあり得ないわけです。

「うちの息子、他人に危害を加えるけどしつけなんて面倒だからしません」とか、
「今日可愛いお母さんが売ってたから、一目ぼれして買ってきたよ」とか、
「血筋の良い男のところに娘を連れて行って、押さえつけてでも妊娠させよう」とか、
「抱っこしたいときだけ抱っこして、基本的には狭いケージの中だけで一生を過ごさせよう」とか、
閉じ込めっぱなし

人間だったらあり得ない話ですからね。

私ものんさんのことを「家族」という目で見ているかというと、見ていない気がします。
飼い主になると決めた以上、のんさんに対して責任があるから世話を焼いているのです。
「家族」と思ってるとかそういう表面的な上っ面な部分は正直どうでも良くて、
飼うと決めたら幸せにする責任が生じるのがペットなのだと思います。


先日実家をゴソゴソしていたら、私が幼稚園時代に担任の先生が作ってくれた
お誕生日カードのようなものが見つかりました。
身長や体重、手形と共に【大きくなったら】という項目があり、
そこには既に「じゅういさん」と書かれていました。
子供


紆余曲折ありつつ、他の職業に心を奪われたりもしつつ、
でも結果として初志貫徹して獣医師として働く今の自分がありますが、
前述したような動物たちを前にしても何も出来ないことを痛感し、
獣医師という仕事が嫌だとかいうレベルではなく、
「動物が嫌いな人に生まれたかった。こういう話を聞いても何も感じない人になりたかった」
と思うことも多々あります。
何も知らずに何も感じずにのほほんと生きていられたら、
もっと楽に、もっと楽しく人生を送れたのではないかと。
そこまで考えてしまうと病んでしまいますし、正直この仕事に向いてないんだと思います。

別に高度な医療を受けさせるべきだとか、高価なご飯を与えるべきだとか
そういうことは全く思っていないんですけど、
少なくとも自分が飼っている動物に対して最低限の責任感を持ってほしいのです。

今年甲子園で優勝した仙台育英高校の須江監督、
「青春ってすごく密」という名言を残した方ですが、先日TVで
「優しさは想像力」と球児たちに指導していると特集されていました。
一人TVに向かって「良いこと言うな〜」と言ってしまいましが、
それです。それなんですよ、私が言いたいやつ!
少し想像力を働かせれば、誰にでも子供でもわかることなんです。
動物たちが言葉を話さない分、言葉以外の動作や表情から
気持ちを汲み取ってあげるのは飼い主なら当然ですし、
難しくてもせめてわかろうと努力してほしいということなのです。
想像できないどころか、想像する気さえない人はそもそも飼ってはダメなんです。

冒頭の繁殖業者が摘発されたのは良いことですが、多分氷山の一角ですし、
ここまでではないにしろ、私のすぐ近くにも不適切な飼育をし、
ただ闇雲に動物を増やし続ける人たちは存在しています。

誰かが辛い思いをしている動物を飼育者から救い出したとしても、
「邪魔モノがいなくなった。また次の新しいのが飼える。ラッキー!」
ぐらいにしか思っていないのでしょう。
結局我々にできることって【焼け石に水】みたいなものだな〜と思います。

この時期は新しく動物を飼う人が増える時期です。
クリスマスプレゼントにしたり、ペットショップで新年のセールが行われていたりもします。
ペットショップ

私がここで愚痴ったところで、不適切な飼育をする人には何も響かないでしょうけど、
大きな決断をする前に、動物と生きることについて真剣に考える人が
少しでも増えてくれれば幸いです。

そして今、不適切な飼育をされている動物たちが、
少しでも良い環境でこの冬を乗り越えられるよう、せめて祈ろうと思います。
私は無宗教ですし、獣医師は科学者の端くれなので、
あまり非科学的なものに頼ったりしないんですが、こればかりは仕方ない。
クリスマスにミサに行かれる方でも、お正月にお参りに行く方でもなんでもいいです。
別にどこの神様でも何の宗教でもいいと思います。
もし何かに手を合わせる時にこの話を思い出したら、一緒に祈ってください。

私の年内最後の投稿にやや重いテーマでしたが、
日々動物たちに誠実に向き合う方々に幸ありますように、縁起のいい写真を一つ
めでたい?

どーぞ。8は末広がりで縁起が良いらしいので。
8が並ぶ瞬間に運転中だったり、停車ができない場所にならないように、
人気の少ない路地でゆっくり走行しながら機会をうかがいました。
な〜んて無駄な努力!


以上で2022年の私の投稿はおしまいです。
今年もありがとうございました。2023年は馬場さんが国家試験なので
それが終わり次第ブログ投稿をしていく予定です。
馬場さんファンの方、お待たせしました!乞うご期待!

では良いお年をお迎えください。

獣医師 大野
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