
2025年07月15日 [病院のこと]
ノミ・マダニ予防をしましょう! と 大人になった小池さん
こんにちは、獣医師の大野です。
ひまわりが咲く時期になりましたね。ひまわりは一番好きな花です。
ひまわりと一口に言っても、実は種類がたくさんあります。
白いひまわりなんかは恐らく近年出てきたものですが、
八重咲タイプはゴッホの絵の中にもあるので老舗でしょう。
花びらの色・花びらの形・中心部の色だけでなく、
大きさも50センチぐらいのものから数メートルになるものまで様々なので
ここに載ってる以外にももっとたくさんあります。
私は王道系の
この感じで1mぐらいのを好んで植えています。
本来暑さに強く、育てるのが簡単なひまわりは、当院前はピッタリです。
うまいこと咲かせて、お盆と秋のお彼岸のお墓参りの際に
切って持って行けばお花代が浮く!
と思ってここのみならず自宅のプランターでも頑張るのですが、
最近は暑さに強いと言われているひまわりでも勝てないほど
夏の暑さが異常なので、咲く時期が全く読めませんし、
途中で枯れてしまうことも多くなりました。
しかも暑さのせいなのか、毎年必ずあるはずの種が
今年はラインナップが明らかに少ない!
今年は入手できた種がわずかだったので、
前の方に他の暑さに強いタイプの植物を植えましたが・・・
ん〜イマイチかな〜
コスモスに至っては枯れてきています。
そもそもここは全く日陰にならないところな上に
強風が当たるところなので、その時点でほとんどの植物はダメになります。
サボテンとか南国系ならいいのかもしれないですが、お墓参りに向かないですからね…。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
前回に引き続き、ノミとマダニの話題です。
しっかり予防をされている方は特にですが、
ノミやマダニがついているのを見たことがないという方もいらっしゃるかと思います。
予防しましょうとか言われるけど、本当はいないんじゃないか…
いやいやそんなことありません、結構いっぱいいますよ!
それを実感するのは、全く予防をしていない外飼いの犬たちや、
保護されたばかりの野良猫を診察した時です。
「たった今拾いました!」と連れてこられた、
500g程度しかない手のひらサイズの子猫でも、
多いと数十匹のノミが体についていますし、
マダニに関しても毎年必ず大きいのを付けた子たちが来ます。
犬にはマダニ、猫にはノミの印象ですが、はっきり言って印象だけで
実際には犬にもノミはつきますし、猫にもマダニはつきます。
どちらも節足動物で、体につく小さい虫という所は共通ですが、
実は全然違う生き物です。
ノミはカマキリとかゴキブリとかと同じ昆虫に分類されますが、
マダニは昆虫ではなくクモの遠い親戚になります。
どちらかわからなければ、突っついてみた時に
ものすごいダッシュで毛の中に隠れようとするのがノミで、
動かないか動きが遅いのがマダニです。
ノミは体についたら比較的すぐ血を吸い始めるので、吸血方法は蚊に近い印象です。
一方のマダニは皮膚と口の間をセメントのような物質で固めて、
口が簡単には抜けなくなる工事をしてから吸い始めるので、
付着してから血を吸い終えるまでに1週間近くかかったりします。
どちらの場合も痒みや発疹が出て皮膚に炎症を起こしたり、
アレルギー症状を起こしたりする可能性があります。
これ自体とても困りますが、本当に問題なのは皮膚症状ではありません。
ノミやマダニに吸血される際、ノミやマダニの体内から体液が少量入ってきますが、
これにより怖〜い感染症にかかってしまう可能性があります。
前回の投稿でお話した【ツツガムシ病】というのもまさにこれと同じです。
ノミが媒介する病気の中で有名なのが【ペスト】です。
↑ペスト専門の医師。香辛料のフィルターのついたマスクをかぶってました。
【黒死病】と呼ばれ、かつてはヨーロッパを中心に世界で何度も大流行して、
億単位の人が亡くなっています。
日本では100年近く発生がありませんが、
世界では今も毎年数百人規模での死亡者が出ています。
適切な治療(抗生剤投与等)をすれば死亡率は20%以下ですが、
適切な治療をしなければ死亡率は30〜60%で、これはエボラ出血熱よりも高いそうです。
現代の日本でノミが媒介する病気としては【猫ひっかき病】と【瓜実条虫】があります。
【猫ひっかき病】はノミがもつバルトネラという微生物に猫が感染し、
感染猫の唾液などから人に感染する病気です。
これは猫ではなく犬の場合でも同様に感染がおこります。
また、バルトネラを持っているノミに人が直接吸血されて感染する場合もあります。
多くの場合は軽症で治癒しますが、免疫力が低下している方や
お年寄りなどでは無治療だと脳炎などを起こし、亡くなることもあるようです。
【瓜実条虫】はきしめんのような寄生虫で、ノミによって媒介されます。
↑長さは1mぐらいになります。
瓜実条虫は消化管に寄生するため、下痢をしてしまったり、
栄養を取られて本人が痩せてしまったりします。
が、死に至るほどの症状はほとんどありません。
ノミが媒介する感染症に関して主なものはこれぐらいですが、むしろ怖いのはマダニです。
最近ニュースではSFTSという言葉が度々出てきています。
SFTSとはマダニが媒介する人獣共通感染症の一つで、
日本語では【重症熱性血小板減少症候群】と言います。字面から
たぶん熱が出て、血小板が少なくなるんだな。ということは、血が止まらなくなるんだな
と予測がつくかと思いますが、まあその通りですが
本当はそれでは説明が足りないくらいの様々な症状が出ます。
難しいのは、あまりにもいろんな症状が出るので、
「この症状が出たらSFTS!」みたいにすぐに診断がつかないことです。
どの道診断がついたところで、基本は対症療法になるでしょうから、
素早い診断がつこうがつかなかろうが変わりないでしょう…と思いがちですが、
大事なのはこの病気が【感染症である=広がっていくもの】ということと、
【感染力がかなり強い】と考えられていることです。
この病気は2013年に中国で発見された新しい感染症で、
日本では西日本でしか発生が見られていないものでした。
なので、東日本で生活する私たちには今のところまだ脅威ではない、
と思っていたのに、先月三重県で
SFTSに感染した猫の診療にあたっていた獣医師が死亡した
とのニュースが流れました。
このニュースは獣医師の間でもかなりざわついています。
これまでにも感染猫から獣医師と動物看護師が感染したという事案はありましたが、
この方々は命までは取られませんでしたので、死亡となるとかなり衝撃的なニュースです。
情報によると、SFTS感染猫を治療した高齢の獣医師が発症し、
救急搬送から4日で亡くなってしまったとのことでした。
これまでの私の考えでは、動物に口の周りを舐めさせるなんてもちろん論外ですが、
手を舐められたりぐらいならちゃんと手を洗えばOK…ぐらいの感覚でした。
が、SFTS感染動物を扱う場合はそれでは全然ダメらしい…。
では実際、どれぐらい防御しなければだめなのでしょうか。
素手は…絶対ダメ。
マスクなしは…絶対ダメ。
半袖で対応は…絶対ダメ。
ええ〜!?そうなの?それは引っ掛かれたり咬まれたりしたら危ないからってこと?
じゃあ、引っかいたり咬んだりしないぐらいぐったりしてる猫なら平気ってこと?
私はあまり動物から負傷することはないから、そういう人なら大丈夫ってこと?
と思ったのですが、先述の過去に感染して復活を遂げた獣医師と動物看護師のケースでは、
一体どうやって人間に感染したのかを検証したところ、
猫の点滴処置をしているときに、ゴーグルをしていなかったことで
診察室に漂うエアロゾル内のウイルスが目から感染したのではないか
とのことでした。
目!?目から感染ってすごくないですか?マスクなしなんてもってのほかです。
感染症が疑わしい動物の時にゴム手袋をすることはあっても、
ゴーグルまでしたことはありませんでした。
でも、それぐらいの神経を使わなければならない感染力だとのこと。
つまり、ノミダニ予防などしていない弱った野良猫を連絡もなしで連れてきてしまうと、
その猫を保護した人も、待合でたまたま居合わせた他の患者さんも、
診察した獣医師も、保定をした看護師も、み〜んなアウトです。
それぐらい怖いウイルスを、マダニが持っている、ということになります。
そもそも、SFTSの疑いがあるとわかっていれば、他の患者さんと接触しないように
工夫を凝らすこともできますが、診断がつくのは数日後なはずなので
そこが一番怖いところです。
全員疑ってかかって常にフル装備とかならいいんでしょうけど・・・
もちろん、すべてのマダニがSFTSウイルスを持っているか、というとそうではありませんが、
日本全国のマダニの3%ぐらいが持っていると言われています。
また、SFTSの調査を行っている専門家曰く、
シカやアライグマなどの野生動物を血液検査してみたところ、
アライグマで10%程度、シカで40%以上がSFTSの抗体を持っていたとのことでした。
ワクチンしてるわけでもないのに抗体を持っているということは、
彼らは既に感染の経験があった可能性が高く、
感染しても自分たちは何の症状も出さずに元気に動き回って
感染範囲を広げていく可能性があるということです。
しかも中部地方まできてるなら、陸続きじゃん!絶対こっちに来れる!
な〜んて思っていたら、ついに関東でも出ました!お隣茨城県で。犬も猫も。
というわけで、もう
「東日本の私たちには関係ないけど…」
という文言を使っていた時代は終わりました。
命に係わる感染症ですから、気を付けなければならないのは確かですけど、
闇雲に怖がっても仕方ありません。
この世からマダニをゼロにするなんてことは絶対にできないのです。となれば、
知識をつけて、正しく恐れて、正しく対策をする、
ということに尽きます。
一先ず当院は、新しいアイテムを購入しました。
咬まれた傷から感染しないように、脇の下まである革手袋と
哀川翔さんが使ってそうな目を保護するゴーグル
感染症ですから、みんなで予防したほうが効果が高い、ということは
コロナ禍を経て重々お分かりかと思いますが、
最低限以下の点について頭に叩き込みましょう。
@ ノミ・マダニ予防を徹底しましょう
お散歩に出る子は必ずしましょう。
庭にしか出さない場合でも、草木が多少なりとも存在するなら予防したほうが良いです。
草むらにはいきません!という方でも、例えば
マンションやお店、当院にもありますが入口のところに敷いてあるカーペット、
ここに前に通過した動物たちから落下したノミやマダニがいないとも限りません。
ノミマダニ予防は義務ではないので、
予防をしていない人はたくさんいます。
以前ワクチンについて投稿した際にも書きましたが、
ワクチンとか予防薬はかなりセンシティブな話題になります。
SNSの情報やどこからかの真偽不明な謎情報に踊らされて
【獣医師は農薬を動物につけて殺そうとしている】
という陰謀説を唱える人もそれを本気で信じている人もいるので
「予防してますか?」なんて無防備に聞こうものなら
めんどくさいことになる可能性を秘めています。
そういう人の考え方を変えるのは無理ですし、そこに労力を使うぐらいなら、
自分がちゃんと予防をして、自分と自分のペットの命を守ることを徹底しましょう。
また、先日ある患者さんから、
お風呂から上がった際に体にマダニが付着していることに気づいた
という衝撃のお話を聞きました。まだ固着する前の、場所探しの段階だったようですが、
たった今お風呂に入ってたことから考えると
恐らく外干ししていたバスタオルから、ということになります。
コレだと草むらに行くとか行かないとか関係なくなります。
予防薬は血を吸った段階で虫を殺すため、
「じゃあ結局刺されちゃうじゃん!」と思うかもしれませんが、
それでも吸血時間が短い方がウイルス移行の確率は下がります。
A 人間は虫よけスプレーを活用しましょう
虫よけスプレーって蚊のイメージでしたが、ノミやマダニにも効果があるそうです。
ドラッグストアで売られてる製品を全部ひっくり返してみたところ、
全ての虫よけスプレーで適用害虫にマダニもノミも含まれていました。
↑私のお気に入り。サラサラしててつけやすく、これをつけると
蚊にも全く刺されません。しかも安い!
「うちは外に出さないから」と思って予防をさぼっていても、
もし飼い主さんがガーデニングやキャンプで外に出た際に
マダニを家に持ち込んでしまったら…最悪だ…
B マダニが付着していたら、無理に引っ張らない!で当院へ
マダニは頭を皮膚に埋め込んで血を吸います。
その姿は犬神家のスケキヨさんを彷彿とさせます。
普通に引っ張って取れるものではありませんが、引っ張ろうと胴体部分を強く押すと、
スポイトのようにマダニ体内のウイルスを動物の体に注入してしまう可能性が高いですし、
首のところでちょん切れて頭だけが皮膚に残るという、
想像するとグロテスクな結果になることもあります。
当院ではマダニを取る器具がありますので、触らずにお連れ下さい。
また、当然ですが、人間についているマダニは人間の皮膚科に行ってください。
C 野良猫や屋外活動する犬で、体調の悪い動物の診察をご希望の方は、
必ず先にお電話ください
お電話で状態をお聞きします。
感染の疑いが強い場合には、特別な準備が必要になるのですぐに診察はできません。
かと言って外でお待ちいただくと、熱中症で診察前に人も動物も死んでしまいますので、
まずはお電話にてご相談いただき、作戦会議をしましょう。
SFTS以外にも、マダニが媒介する感染症はたくさんありますので
SFTS以外は脅威ではない、ということはありません。
人間を最も殺している動物はサメでも熊でもなく、実は蚊らしいのですが、(第2位は人間)
蚊だのダニだの、あんな小さいものに殺されるって、悔しくないですか?
正直別に血液ぐらいいくらでもくれてやりますけど、
そのお礼に病気を置いていくなんて恩知らずもいいとこです(怒)。
私たちスタッフもそんな奴らのために死にたかありません。
ノミダニ予防、それは動物を飼う人の【エチケット】のようなものです。
犬が散歩中に排泄したら、拾いますよね?放置して汚れが広がらないように、
その糞尿から他の個体に感染症が広がったりしないようにきれいにしますよね?
それと同じです。私たちスタッフは皆さんより感染の確率が高い職種になりますので、
もし仮にワクチンなんかが出れば優先的に打てるんじゃないか…と思ってますが、
残念ながら現状ワクチンは存在しません。 となると、かからないようにするしかないのです。
人間の病院のように【感染の疑いのある患者はお断り!】とすればいいのかもしれませんが、
そういうわけにもいきません。
皆さん、院長が死んじゃったら困りますよね?
『具合の悪い子の診察はお断りします!』とかなったら困りますよね?
というわけで、ノミ・マダニ予防を徹底しましょう。
ご協力お願い致します。
◆◇おまけ◇◆
夏は実習生が来る季節です。
過去に当院に来た実習生たちの頑張る背中を投稿していましたが、
ふと過去をさかのぼってみたところ、2019年の実習生に…
↑まだ20歳の小池さん。
なんか・・・かわいい!幼くないですか?
そう思ったのが私だけかと思ったら、黒田さんも
「なんか・・・赤ちゃんみたい!」とのこと。
顔はわからないのに、背中だけで幼い感じがすごく伝わります。
同じ格好を現在の小池さんにしてもらいましたが、
わかります?髪の色はちょいちょい染めるのでファンキーな不良(?)に仕上がってますが、
別に背が伸びたわけでも体型が変わったわけでもなく、それだけでこんなに違います。
学生から社会人になると数年でこんなに大人の女性になるんですね。
思い返してみれば、最初の頃は話が伝わってなかったりかみ合ってなかったり、
14歳離れるとこんなに文化が違うんだな〜と感じることが多かったですが、
今はだいぶ噛み合うようになりましたし、頼りになる存在です。
そして、若い時から私と院長がクドクドしつこく言ったおかげなのか、
よくわからないと言いながらも、選挙には必ず投票に行っていますし、
将来に対してコツコツそなえている、むしろちゃんとした大人です。
そろそろ小娘返上ですかね・・・
となると、次は黒田さんですね。
まだ「絶対に投票に行かなきゃ!」感が定着していないので、
そのあたりから大人の世界に引っ張ろうと思います。
ひまわりが咲く時期になりましたね。ひまわりは一番好きな花です。
ひまわりと一口に言っても、実は種類がたくさんあります。

白いひまわりなんかは恐らく近年出てきたものですが、
八重咲タイプはゴッホの絵の中にもあるので老舗でしょう。
花びらの色・花びらの形・中心部の色だけでなく、
大きさも50センチぐらいのものから数メートルになるものまで様々なので
ここに載ってる以外にももっとたくさんあります。
私は王道系の

この感じで1mぐらいのを好んで植えています。
本来暑さに強く、育てるのが簡単なひまわりは、当院前はピッタリです。
うまいこと咲かせて、お盆と秋のお彼岸のお墓参りの際に
切って持って行けばお花代が浮く!
と思ってここのみならず自宅のプランターでも頑張るのですが、
最近は暑さに強いと言われているひまわりでも勝てないほど
夏の暑さが異常なので、咲く時期が全く読めませんし、
途中で枯れてしまうことも多くなりました。
しかも暑さのせいなのか、毎年必ずあるはずの種が
今年はラインナップが明らかに少ない!
今年は入手できた種がわずかだったので、
前の方に他の暑さに強いタイプの植物を植えましたが・・・


ん〜イマイチかな〜
コスモスに至っては枯れてきています。
そもそもここは全く日陰にならないところな上に
強風が当たるところなので、その時点でほとんどの植物はダメになります。
サボテンとか南国系ならいいのかもしれないですが、お墓参りに向かないですからね…。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
前回に引き続き、ノミとマダニの話題です。

しっかり予防をされている方は特にですが、
ノミやマダニがついているのを見たことがないという方もいらっしゃるかと思います。
予防しましょうとか言われるけど、本当はいないんじゃないか…
いやいやそんなことありません、結構いっぱいいますよ!
それを実感するのは、全く予防をしていない外飼いの犬たちや、
保護されたばかりの野良猫を診察した時です。
「たった今拾いました!」と連れてこられた、
500g程度しかない手のひらサイズの子猫でも、
多いと数十匹のノミが体についていますし、
マダニに関しても毎年必ず大きいのを付けた子たちが来ます。
犬にはマダニ、猫にはノミの印象ですが、はっきり言って印象だけで
実際には犬にもノミはつきますし、猫にもマダニはつきます。
どちらも節足動物で、体につく小さい虫という所は共通ですが、
実は全然違う生き物です。
ノミはカマキリとかゴキブリとかと同じ昆虫に分類されますが、
マダニは昆虫ではなくクモの遠い親戚になります。
どちらかわからなければ、突っついてみた時に
ものすごいダッシュで毛の中に隠れようとするのがノミで、
動かないか動きが遅いのがマダニです。
ノミは体についたら比較的すぐ血を吸い始めるので、吸血方法は蚊に近い印象です。
一方のマダニは皮膚と口の間をセメントのような物質で固めて、
口が簡単には抜けなくなる工事をしてから吸い始めるので、
付着してから血を吸い終えるまでに1週間近くかかったりします。
どちらの場合も痒みや発疹が出て皮膚に炎症を起こしたり、
アレルギー症状を起こしたりする可能性があります。
これ自体とても困りますが、本当に問題なのは皮膚症状ではありません。
ノミやマダニに吸血される際、ノミやマダニの体内から体液が少量入ってきますが、
これにより怖〜い感染症にかかってしまう可能性があります。
前回の投稿でお話した【ツツガムシ病】というのもまさにこれと同じです。
ノミが媒介する病気の中で有名なのが【ペスト】です。

↑ペスト専門の医師。香辛料のフィルターのついたマスクをかぶってました。
【黒死病】と呼ばれ、かつてはヨーロッパを中心に世界で何度も大流行して、
億単位の人が亡くなっています。
日本では100年近く発生がありませんが、
世界では今も毎年数百人規模での死亡者が出ています。
適切な治療(抗生剤投与等)をすれば死亡率は20%以下ですが、
適切な治療をしなければ死亡率は30〜60%で、これはエボラ出血熱よりも高いそうです。
現代の日本でノミが媒介する病気としては【猫ひっかき病】と【瓜実条虫】があります。
【猫ひっかき病】はノミがもつバルトネラという微生物に猫が感染し、
感染猫の唾液などから人に感染する病気です。
これは猫ではなく犬の場合でも同様に感染がおこります。
また、バルトネラを持っているノミに人が直接吸血されて感染する場合もあります。
多くの場合は軽症で治癒しますが、免疫力が低下している方や
お年寄りなどでは無治療だと脳炎などを起こし、亡くなることもあるようです。
【瓜実条虫】はきしめんのような寄生虫で、ノミによって媒介されます。

↑長さは1mぐらいになります。
瓜実条虫は消化管に寄生するため、下痢をしてしまったり、
栄養を取られて本人が痩せてしまったりします。
が、死に至るほどの症状はほとんどありません。
ノミが媒介する感染症に関して主なものはこれぐらいですが、むしろ怖いのはマダニです。
最近ニュースではSFTSという言葉が度々出てきています。
SFTSとはマダニが媒介する人獣共通感染症の一つで、
日本語では【重症熱性血小板減少症候群】と言います。字面から
たぶん熱が出て、血小板が少なくなるんだな。ということは、血が止まらなくなるんだな
と予測がつくかと思いますが、まあその通りですが
本当はそれでは説明が足りないくらいの様々な症状が出ます。
難しいのは、あまりにもいろんな症状が出るので、
「この症状が出たらSFTS!」みたいにすぐに診断がつかないことです。
どの道診断がついたところで、基本は対症療法になるでしょうから、
素早い診断がつこうがつかなかろうが変わりないでしょう…と思いがちですが、
大事なのはこの病気が【感染症である=広がっていくもの】ということと、
【感染力がかなり強い】と考えられていることです。
この病気は2013年に中国で発見された新しい感染症で、
日本では西日本でしか発生が見られていないものでした。
なので、東日本で生活する私たちには今のところまだ脅威ではない、
と思っていたのに、先月三重県で
SFTSに感染した猫の診療にあたっていた獣医師が死亡した
とのニュースが流れました。
このニュースは獣医師の間でもかなりざわついています。
これまでにも感染猫から獣医師と動物看護師が感染したという事案はありましたが、
この方々は命までは取られませんでしたので、死亡となるとかなり衝撃的なニュースです。
情報によると、SFTS感染猫を治療した高齢の獣医師が発症し、
救急搬送から4日で亡くなってしまったとのことでした。
これまでの私の考えでは、動物に口の周りを舐めさせるなんてもちろん論外ですが、
手を舐められたりぐらいならちゃんと手を洗えばOK…ぐらいの感覚でした。
が、SFTS感染動物を扱う場合はそれでは全然ダメらしい…。
では実際、どれぐらい防御しなければだめなのでしょうか。
素手は…絶対ダメ。
マスクなしは…絶対ダメ。
半袖で対応は…絶対ダメ。
ええ〜!?そうなの?それは引っ掛かれたり咬まれたりしたら危ないからってこと?
じゃあ、引っかいたり咬んだりしないぐらいぐったりしてる猫なら平気ってこと?
私はあまり動物から負傷することはないから、そういう人なら大丈夫ってこと?
と思ったのですが、先述の過去に感染して復活を遂げた獣医師と動物看護師のケースでは、
一体どうやって人間に感染したのかを検証したところ、
猫の点滴処置をしているときに、ゴーグルをしていなかったことで
診察室に漂うエアロゾル内のウイルスが目から感染したのではないか
とのことでした。
目!?目から感染ってすごくないですか?マスクなしなんてもってのほかです。
感染症が疑わしい動物の時にゴム手袋をすることはあっても、
ゴーグルまでしたことはありませんでした。
でも、それぐらいの神経を使わなければならない感染力だとのこと。
つまり、ノミダニ予防などしていない弱った野良猫を連絡もなしで連れてきてしまうと、
その猫を保護した人も、待合でたまたま居合わせた他の患者さんも、
診察した獣医師も、保定をした看護師も、み〜んなアウトです。
それぐらい怖いウイルスを、マダニが持っている、ということになります。
そもそも、SFTSの疑いがあるとわかっていれば、他の患者さんと接触しないように
工夫を凝らすこともできますが、診断がつくのは数日後なはずなので
そこが一番怖いところです。
全員疑ってかかって常にフル装備とかならいいんでしょうけど・・・
もちろん、すべてのマダニがSFTSウイルスを持っているか、というとそうではありませんが、
日本全国のマダニの3%ぐらいが持っていると言われています。
また、SFTSの調査を行っている専門家曰く、
シカやアライグマなどの野生動物を血液検査してみたところ、
アライグマで10%程度、シカで40%以上がSFTSの抗体を持っていたとのことでした。
ワクチンしてるわけでもないのに抗体を持っているということは、
彼らは既に感染の経験があった可能性が高く、
感染しても自分たちは何の症状も出さずに元気に動き回って
感染範囲を広げていく可能性があるということです。
しかも中部地方まできてるなら、陸続きじゃん!絶対こっちに来れる!
な〜んて思っていたら、ついに関東でも出ました!お隣茨城県で。犬も猫も。
というわけで、もう
「東日本の私たちには関係ないけど…」
という文言を使っていた時代は終わりました。
命に係わる感染症ですから、気を付けなければならないのは確かですけど、
闇雲に怖がっても仕方ありません。
この世からマダニをゼロにするなんてことは絶対にできないのです。となれば、
知識をつけて、正しく恐れて、正しく対策をする、
ということに尽きます。
一先ず当院は、新しいアイテムを購入しました。

咬まれた傷から感染しないように、脇の下まである革手袋と
哀川翔さんが使ってそうな目を保護するゴーグル
感染症ですから、みんなで予防したほうが効果が高い、ということは
コロナ禍を経て重々お分かりかと思いますが、
最低限以下の点について頭に叩き込みましょう。
@ ノミ・マダニ予防を徹底しましょう
お散歩に出る子は必ずしましょう。
庭にしか出さない場合でも、草木が多少なりとも存在するなら予防したほうが良いです。
草むらにはいきません!という方でも、例えば
マンションやお店、当院にもありますが入口のところに敷いてあるカーペット、
ここに前に通過した動物たちから落下したノミやマダニがいないとも限りません。
ノミマダニ予防は義務ではないので、
予防をしていない人はたくさんいます。
以前ワクチンについて投稿した際にも書きましたが、
ワクチンとか予防薬はかなりセンシティブな話題になります。
SNSの情報やどこからかの真偽不明な謎情報に踊らされて
【獣医師は農薬を動物につけて殺そうとしている】
という陰謀説を唱える人もそれを本気で信じている人もいるので
「予防してますか?」なんて無防備に聞こうものなら
めんどくさいことになる可能性を秘めています。
そういう人の考え方を変えるのは無理ですし、そこに労力を使うぐらいなら、
自分がちゃんと予防をして、自分と自分のペットの命を守ることを徹底しましょう。
また、先日ある患者さんから、
お風呂から上がった際に体にマダニが付着していることに気づいた
という衝撃のお話を聞きました。まだ固着する前の、場所探しの段階だったようですが、
たった今お風呂に入ってたことから考えると
恐らく外干ししていたバスタオルから、ということになります。
コレだと草むらに行くとか行かないとか関係なくなります。
予防薬は血を吸った段階で虫を殺すため、
「じゃあ結局刺されちゃうじゃん!」と思うかもしれませんが、
それでも吸血時間が短い方がウイルス移行の確率は下がります。
A 人間は虫よけスプレーを活用しましょう
虫よけスプレーって蚊のイメージでしたが、ノミやマダニにも効果があるそうです。
ドラッグストアで売られてる製品を全部ひっくり返してみたところ、
全ての虫よけスプレーで適用害虫にマダニもノミも含まれていました。

↑私のお気に入り。サラサラしててつけやすく、これをつけると
蚊にも全く刺されません。しかも安い!
「うちは外に出さないから」と思って予防をさぼっていても、
もし飼い主さんがガーデニングやキャンプで外に出た際に
マダニを家に持ち込んでしまったら…最悪だ…
B マダニが付着していたら、無理に引っ張らない!で当院へ
マダニは頭を皮膚に埋め込んで血を吸います。
その姿は犬神家のスケキヨさんを彷彿とさせます。

普通に引っ張って取れるものではありませんが、引っ張ろうと胴体部分を強く押すと、
スポイトのようにマダニ体内のウイルスを動物の体に注入してしまう可能性が高いですし、
首のところでちょん切れて頭だけが皮膚に残るという、
想像するとグロテスクな結果になることもあります。
当院ではマダニを取る器具がありますので、触らずにお連れ下さい。
また、当然ですが、人間についているマダニは人間の皮膚科に行ってください。
C 野良猫や屋外活動する犬で、体調の悪い動物の診察をご希望の方は、
必ず先にお電話ください
お電話で状態をお聞きします。
感染の疑いが強い場合には、特別な準備が必要になるのですぐに診察はできません。
かと言って外でお待ちいただくと、熱中症で診察前に人も動物も死んでしまいますので、
まずはお電話にてご相談いただき、作戦会議をしましょう。
SFTS以外にも、マダニが媒介する感染症はたくさんありますので
SFTS以外は脅威ではない、ということはありません。
人間を最も殺している動物はサメでも熊でもなく、実は蚊らしいのですが、(第2位は人間)
蚊だのダニだの、あんな小さいものに殺されるって、悔しくないですか?
正直別に血液ぐらいいくらでもくれてやりますけど、
そのお礼に病気を置いていくなんて恩知らずもいいとこです(怒)。
私たちスタッフもそんな奴らのために死にたかありません。
ノミダニ予防、それは動物を飼う人の【エチケット】のようなものです。
犬が散歩中に排泄したら、拾いますよね?放置して汚れが広がらないように、
その糞尿から他の個体に感染症が広がったりしないようにきれいにしますよね?
それと同じです。私たちスタッフは皆さんより感染の確率が高い職種になりますので、
もし仮にワクチンなんかが出れば優先的に打てるんじゃないか…と思ってますが、
残念ながら現状ワクチンは存在しません。 となると、かからないようにするしかないのです。
人間の病院のように【感染の疑いのある患者はお断り!】とすればいいのかもしれませんが、
そういうわけにもいきません。
皆さん、院長が死んじゃったら困りますよね?
『具合の悪い子の診察はお断りします!』とかなったら困りますよね?
というわけで、ノミ・マダニ予防を徹底しましょう。
ご協力お願い致します。
◆◇おまけ◇◆
夏は実習生が来る季節です。
過去に当院に来た実習生たちの頑張る背中を投稿していましたが、
ふと過去をさかのぼってみたところ、2019年の実習生に…

↑まだ20歳の小池さん。
なんか・・・かわいい!幼くないですか?
そう思ったのが私だけかと思ったら、黒田さんも
「なんか・・・赤ちゃんみたい!」とのこと。
顔はわからないのに、背中だけで幼い感じがすごく伝わります。
同じ格好を現在の小池さんにしてもらいましたが、

わかります?髪の色はちょいちょい染めるのでファンキーな不良(?)に仕上がってますが、
別に背が伸びたわけでも体型が変わったわけでもなく、それだけでこんなに違います。
学生から社会人になると数年でこんなに大人の女性になるんですね。
思い返してみれば、最初の頃は話が伝わってなかったりかみ合ってなかったり、
14歳離れるとこんなに文化が違うんだな〜と感じることが多かったですが、
今はだいぶ噛み合うようになりましたし、頼りになる存在です。
そして、若い時から私と院長がクドクドしつこく言ったおかげなのか、
よくわからないと言いながらも、選挙には必ず投票に行っていますし、
将来に対してコツコツそなえている、むしろちゃんとした大人です。
そろそろ小娘返上ですかね・・・
となると、次は黒田さんですね。
まだ「絶対に投票に行かなきゃ!」感が定着していないので、
そのあたりから大人の世界に引っ張ろうと思います。
